歯科コラム

近年、インプラント治療は失われた歯の機能を回復する治療法として広く普及し、多くの患者様に選ばれる治療となっています。一方で、高血圧症、糖尿病、心疾患、甲状腺疾患など、何らかの全身疾患をお持ちの患者様が増えているのも事実です。

その中でも今回取り上げたいのが 「バセドウ病」 です。
「甲状腺の病気があるけれど、インプラント治療はできるの?」
このようなご質問を、実際の臨床の場で受けることも少なくありません。

本記事では、バセドウ病とはどのような病気なのか、そしてバセドウ病とインプラント治療の関係について、患者様にも分かりやすく解説していきます。

 


 

バセドウ病とはどのような病気か

バセドウ病は、自己免疫異常によって甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
甲状腺ホルモンは、心拍数、代謝、体温調節など、全身のさまざまな機能に関与しています。そのため、ホルモンが過剰になると身体全体に多様な症状が現れます。

代表的な症状には以下のようなものがあります。

  • ・動悸・息切れ
  • ・発汗過多、暑がり
  • ・手の震え
  • ・体重減少
  • ・不安感、イライラ
  • ・疲れやすさ
  • ・眼球突出(バセドウ眼症)

これらの症状は日常生活に影響を及ぼすだけでなく、歯科治療、とくに外科処置を伴うインプラント治療にも注意が必要となります。

 


 

バセドウ病がインプラント治療に与える影響

バセドウ病そのものが「インプラント治療が絶対にできない病気」というわけではありません。しかし、病状のコントロール状態によっては大きな注意が必要です。

 

① 心血管系への影響

甲状腺ホルモン過剰状態では、心拍数の増加や不整脈が起こりやすくなります。
インプラント手術は局所麻酔下で行われることが多いものの、緊張やストレスにより心臓への負担が増える可能性があります。

特に、病状が安定していない状態では、手術中・術後のリスクが高まるため慎重な判断が必要です。

 

② 骨代謝への影響

甲状腺ホルモンは骨代謝にも大きく関与しています。
バセドウ病では骨吸収が亢進し、骨密度が低下しやすいことが知られています。

インプラント治療では、顎の骨とインプラント体がしっかり結合する「オッセオインテグレーション」が重要です。
骨代謝が不安定な状態では、この結合過程に影響が出る可能性があるため、事前評価が不可欠となります。

 

③ 感染・創傷治癒への影響

甲状腺機能亢進状態では、全身の代謝が高まる一方で、免疫バランスが乱れることもあります。
そのため、術後の治癒過程や感染リスクについても十分な配慮が必要です。

 


 

バセドウ病の患者様でもインプラント治療は可能?

結論から申し上げると、バセドウ病が適切にコントロールされていれば、インプラント治療は可能なケースが多いです。

重要なのは以下のポイントです。

 

内科主治医との連携

現在の甲状腺ホルモン値、服薬状況、全身状態を内科主治医と共有し、安全性を確認します。

 

病状が安定していること

甲状腺機能が安定している「寛解状態」またはそれに近い状態であることが望ましいです。

 

精密な術前検査

歯科用CTによる顎骨の評価、全身状態を踏まえた治療計画立案が不可欠です。

 

低侵襲な治療計画

手術時間の短縮や、患者様の負担を最小限に抑えた術式を選択します。

 


 

当院が大切にしている考え方

インプラント治療は、単に歯を入れる治療ではありません。
全身の健康状態を十分に考慮した上で行う「医療行為」です。

当院では、

  • ・全身疾患をお持ちの患者様への丁寧なカウンセリング
  • ・必要に応じた医科との連携
  • ・長期的な安全性を重視した治療計画

これらを大切にし、「できる・できない」ではなく
「どうすれば安全に治療ができるか」を常に考えています。

 


 

まとめ

  • ・バセドウ病があっても、適切にコントロールされていればインプラント治療は可能なケースが多い
  • ・重要なのは病状の安定、医科との連携、慎重な治療計画
  • ・自己判断せず、必ず歯科医師に全身状態を伝えることが大切

インプラント治療をご検討中で、バセドウ病などの全身疾患をお持ちの患者様は、ぜひ一度ご相談ください。
患者様一人ひとりに合わせた、安全で納得のいく治療をご提案いたします。