歯科コラム

当院では、インプラント治療をご希望される患者様に対して、事前に歯科用CT(3D画像診断)をおすすめしています。

患者様からよくいただくご質問のひとつに、
CTって病院にもあるけど、歯科のCTと何が違うんですか?
というものがあります。

確かに、“CT”という言葉は同じですが、歯科用CT(CBCT)と医科用CTでは設計・用途・解像度・被ばく量などが大きく異なります。

特にインプラント治療においては、歯科用CTがあるかどうかで治療計画の精度と安全性が大きく変わります。

今回は、「歯科用CTと医科用CTの違い」をテーマに、特にインプラント治療との関わりを中心に解説します。

 


 

■ CTとは何か?その基本からおさらい

CTとは「コンピュータ断層撮影(Computed Tomography)」の略で、X線を使って体の内部を立体的(3D)に撮影する医療機器です。

従来のレントゲン写真では見えない深さや角度、骨の内部構造などを細かく確認することができ、外科的処置を伴う治療の安全性を高める上で欠かせないツールとなっています。

 


 

歯科用CTCBCT)とは?

歯科用CTは「コーンビームCT(Cone Beam CT)」とも呼ばれ、口腔内・顎骨領域を高精細に撮影するために設計された専用のCTです。

◎ 特徴:

  • ・顎の骨や歯、神経の位置をミリ単位で立体的に把握できる
  • ・撮影範囲が限定的な分、被ばく線量が少ない
  • ・撮影は数十秒〜1分程度で完了
  • ・座ったまま楽な姿勢で撮影できる

・撮影後すぐにデータを確認でき、その場で説明が可能

 


 

医科用CTとの違いとは?

一方で、病院の放射線科などにある「医科用CT」は、頭部・胸部・腹部など全身の病変を診断するために開発されたCTです。

◎ 医科用CTの特徴:

  • ・広範囲(頭部〜腹部など)を撮影可能
  • ・身体を寝かせて(仰臥位)撮影
  • ・組織密度の違い(がん・出血など)を高精度に捉える
  • ・被ばく線量が高くなる傾向がある

・歯のような細かい構造はやや苦手

 


 

歯科用CTは、なぜインプラント治療で欠かせないのか

インプラント治療は、あごの骨に人工歯根を埋め込む外科手術です。
安全に、正確にインプラントを埋入するには、以下のような情報が必要不可欠です。

▼ 骨の量と厚み

インプラントを埋め込むには十分な骨の高さと幅が必要です。レントゲンでは平面的にしか写りませんが、歯科用CTなら立体的に骨量を正確に測定できます。

▼ 神経や血管の位置

下あごには「下歯槽神経」、上あごには「上顎洞」という空洞があり、これらを避けるようにインプラントを埋入する必要があります。歯科用CTではこれらの位置が精密に可視化されます。

▼ 骨質の確認

骨の密度(質)も成功の鍵です。やわらかすぎる骨ではインプラントが安定しません。歯科用CTで骨の状態を確認することで、必要に応じて骨造成の判断もできます。

▼ インプラントの角度・深さのシミュレーション

撮影データをもとに3Dソフト上で「どの位置・角度・深さにインプラントを埋めるか」を事前にシミュレーションできます。これにより、手術の精度が大幅に向上し、トラブルを未然に防ぐことができます。

 


 

医科用CTではできないのか?

もちろん、医科用CTでも顎骨の情報は得られます。
しかし、

  • 歯の根の細かい構造(たとえば0.1〜0.3mm単位の裂け目)
  • インプラントを埋めるピンポイントの部位
  • 神経と歯根の非常に近接した位置関係

といった細かな診断には、やはり歯科用CTが圧倒的に有利です。

また、医科用CTでは被ばく量が歯科用の1020倍になることもあるため、必要最小限の撮影が望ましい歯科治療においては向いていないことが多いです。

 


 

歯科用CTで何が見えるのか?~インプラント症例の一例~

たとえば、下あごに1本だけインプラントを入れるというシンプルな症例であっても、歯科用CTで次のような情報を得ることができます。

  • ・骨の幅:4.2mm → インプラント径の選定に直結
  • ・神経との距離:2.1mm → リスク回避の判断基準
  • ・骨質の評価:TypeⅢ → 初期固定の難易度を予測
  • ・歯列の角度:15°傾斜 → 補綴設計に配慮

これらの情報を得てから治療を行うのと、得ずに手探りで進めるのとでは、成功率・治療期間・患者様の満足度に大きな差が出ることは明白です。

 


 

歯科用CTの被ばくは大丈夫?

CTと聞くと「放射線の影響が心配…」という方もいらっしゃるかもしれませんが、歯科用CTの被ばく線量は非常に少ないです。

たとえば、東京〜ニューヨーク間の飛行機移動で受ける自然放射線の量と比べても、歯科用CTの被ばく量の方が少ないと言われています。

また、撮影範囲が口腔周囲に限定されており、必要な部分だけに照射するため、安全性は十分に確保されています。

 


 

まとめ:インプラント治療を受けるなら「歯科用CTがある医院」へ

インプラント治療は、安全性・精度・予後の良好さがすべて揃ってこそ成功すると言えます。
そのためには、事前の精密な診査診断が欠かせず、歯科用CTの存在は非常に大きな意味を持ちます。

当院では、歯科用CTを導入しており、すべてのインプラント治療において正確かつ安全な治療計画を立てることを徹底しています。

「自分にインプラントが適しているのか知りたい」
「まずは診断だけでも受けてみたい」
という方も、お気軽にご相談ください。CT画像を一緒に見ながら、わかりやすく丁寧にご説明いたします。