歯科コラム

今回は少し私の専門的な活動についてお話しさせていただこうと思います。

実は私、ITI(International Team for Implantology)という国際的な学術組織に所属しており、現在はその中でフェロー(Fellow)として活動させていただいております。

日々、患者様に質の高いインプラント治療を提供するうえで、私自身が「どんな組織で学び、どのような理念を大切にしているか」をご理解いただければ、より安心して治療を受けていただけるのではないかと思い、このブログを書かせていただきました。

 


 

■ ITIInternational Team for Implantology)とは?

ITIとは、「International Team for Implantology」の略で、世界中の歯科医師・研究者・技工士などが所属する非営利の学術組織です。

設立は1980年、スイスのバーゼルに本部があり、現在では世界100か国以上・20,000人を超える会員が所属しているインプラント学術界の最前線を担う団体の一つです。

ITIの特徴的なポイント:

  • ・学術的根拠(エビデンス)に基づくインプラント治療の標準化・発展
  • ・世界規模での教育活動・知識の共有
  • ・科学的で中立的な立場を重視(企業色に左右されない)
  • ・臨床・研究・教育のバランスを重視

単なる学会や製品のプロモーション団体ではなく、「より良い治療のために知識と技術を共有する」ことを目的とした、非常に中立で良質な組織です。

 


 

■ ITIが行っている活動とは?

ITIの主な活動は以下の3つに大別されます。

 

① 教育活動(Education)

ITIは、インプラントに関する最新かつ科学的な知識を広めるための教育活動を積極的に行っています。

具体的には:

  • 世界中で開催されるスタディクラブ(勉強会)
  • 年次カンファレンス・Webinarの開催
  • ITI Curriculum(教育プログラム)による段階的な教育
  • 若手歯科医師・専門医向けの育成プログラム

といった活動を通じて、インプラントを安全かつ確実に行うための臨床知識を、経験や国境を超えて共有しています。

 

② ガイドラインの策定・発信(Consensus)

ITIでは、世界中の臨床データや研究成果をもとに、エビデンスに基づいたガイドライン(Consensus Statement)を定期的に発表しています。

これは、インプラント治療の“正しい進め方”を明文化した基準書であり、臨床家にとって非常に貴重な情報源です。

たとえば:

  • ・抜歯即時埋入の適応と禁忌
  • ・GBR(骨造成)の成功率とリスク
  • ・上部構造の設計と長期安定性
  • ・インプラント周囲炎の予防と管理

など、最新のトピックが網羅されており、世界中の専門家の間で共通の基盤となっている資料でもあります。

 

③ 国際的なコミュニティ形成(Networking)

ITIは、臨床家・研究者・教育者が国境や世代を超えてつながるネットワークを築いています。

たとえば、日本にも各地域に「ITIスタディクラブ」が存在し、定期的に臨床症例のディスカッションや勉強会が開催されています。

そういった場で症例を共有したり、治療の悩みを相談したりすることで、医療の質をチームとして高めていく文化が生まれているのです。

 


 

■ ITIフェロー(Fellow)とは?

ITIにはさまざまな会員区分がありますが、私が所属しているのは「ITI Fellow(フェロー)」という役割です。

 

フェローとは何か?

ITIのFellowは、単に会員として所属するだけでなく、

  • ・教育活動やスタディクラブの企画・運営
  • ・臨床的・学術的な貢献
  • ・地域コミュニティへの知識還元
  • ・若手歯科医師の育成サポート

といった、“組織の顔”としての役割も担う立場です。

ITIフェローは審査・推薦を経て任命されるポジションであり、国や地域の臨床レベルの向上に寄与することが期待されています。

私自身もこの立場を通して、学ぶ側から「伝える側」へと意識が変わった部分が多く、より責任ある姿勢で臨床に取り組むようになったと感じています。

 


 

なぜITIに所属しているのか?

私がITIに惹かれた理由は、「科学的根拠に基づいた正しい治療を学びたい」という思いからでした。

世の中にはさまざまな治療法や器材がありますが、「それが本当に患者さんにとって最善なのか?」という視点を常に持つことが重要です。

ITIは、製品や技術に偏らず、エビデンスと臨床経験をベースにした知識共有の場であり、日々の臨床に活かせる学びが多くあります。

また、国内外の先生方との交流を通じて、治療レベルだけでなく医療に対する姿勢も学ぶことができたことは、私の歯科医師人生において非常に大きな財産です。

 


 

最後に:より良い治療のために

インプラント治療は、非常に高い専門性と経験を必要とする分野です。

私自身、ITIのフェローとして、これからも学びを深めながら、常に“科学的根拠”と“患者様の安心”を両立できる治療を提供していきたいと思っています。

「より良い医療は、チームで支える」
これが、ITIが大切にしている哲学であり、私自身が日々心がけている信念でもあります。

今後も、患者様お一人おひとりにとって最適なインプラント治療をご提案できるよう努めてまいりますので、どうぞ安心してご相談ください。