
~電子タバコ(加熱式タバコ)も含めて考える~
インプラント治療は、歯を失ったときの自然で機能的な解決策として多くの患者様に選ばれています。しかし、喫煙はこの治療の成功率を大きく左右する要因のひとつです。
最近では、アイコス(IQOS)やグロー(glo)といった加熱式タバコや、VAPEと呼ばれる電子タバコの利用が増えており、「紙巻きタバコじゃないなら大丈夫ですか?」というご質問をよくいただきます。
この記事では、インプラント治療における喫煙の影響に加え、電子タバコについての最新の見解も交えてご説明いたします。
1. インプラント治療と「紙巻きタバコ」の関係
紙巻きタバコにはニコチンや一酸化炭素が含まれており、血流の低下・免疫力の低下・感染リスクの上昇などを引き起こします。そのため、喫煙者は非喫煙者と比べてインプラントの成功率が下がる、インプラント周囲炎のリスクが上がるなど、さまざまな悪影響があることが分かっています。
2. 電子タバコ・加熱式タバコは安全か?
■「煙が出ないから安心」は誤解
加熱式タバコや電子タバコは、煙ではなく「蒸気(エアロゾル)」を吸うタイプですが、その蒸気の中にも有害物質が含まれていることが分かっています。
例えば、加熱式タバコ(アイコスなど)でも以下の成分が確認されています:
- ・ニコチン
- ・有機化合物(ホルムアルデヒドなど)
- ・微量の重金属
- ・酸化ストレスを引き起こす物質
これらはすべて、口腔内の血流障害や骨の治癒遅延に影響する可能性がある物質です。
■ VAPE(ニコチンフリータイプ)はどうか?
一部のVAPEは「ニコチンフリー」として販売されているため、「これなら大丈夫ですよね?」と質問されることがあります。
たしかにニコチンが含まれていないタイプもありますが、香料や溶剤(プロピレングリコールなど)による炎症の可能性が指摘されており、完全に安全とは言い切れないのが現状です。
さらに、蒸気を吸い込むことで気道や粘膜に刺激が加わり、インプラント手術後の治癒を妨げるリスクもゼロではありません。
3. 最新研究から見る「電子タバコとインプラント」
近年の歯科研究では、以下のような報告が増えています:
- ・加熱式タバコ利用者のインプラント成功率は紙巻きタバコとほぼ同様か、それに近い
- ・インプラント周囲の炎症や骨吸収(骨が痩せていく現象)が見られる可能性がある
つまり、電子タバコ・加熱式タバコであっても、インプラントにとってリスクがあるということが分かってきています。
4. 医師としての結論:禁煙が最善の選択
どのタイプの喫煙器具でも、インプラント治療にとって「ゼロリスク」ではありません。紙巻きタバコよりは害が少ないとされる加熱式タバコも、術後の経過や長期的な安定性を考えると、禁煙に勝る選択はないのです。
特に以下の期間は、可能な限り完全禁煙が望まれます:
- ・手術の2週間前
- ・手術後の2〜3か月間
- ・できればその後も継続的な禁煙
禁煙が難しい方には、禁煙外来や代替法のご紹介も可能です。恥ずかしがらずに、正直に喫煙状況を教えてください。
5. まとめ
- ・インプラント治療には骨の治癒・感染予防・血流の正常化が必要不可欠です。
- ・紙巻きタバコだけでなく、電子タバコや加熱式タバコもリスクがあることが分かっています。
- ・最も安全で、インプラントを長持ちさせる方法は禁煙です。
ご自身の健康と、これからの生活の質を守るためにも、治療をきっかけにぜひ禁煙にチャレンジしてみてください。